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ナムサイディー

タイで火災避難訓練に参加して学ぶこと3つ

2019年12月17日

日本国内ではまれにしか見ませんが、タイのマンション(コンドミニアム)では当然のように毎年の火災避難訓練が行われています。この手の訓練は馬鹿にしがちですが、外国に長期に滞在する人は参加しておかなければ、下手したら自分や家族の命を危険にさらしてしまいます。

本ページが役立ちそうな方は

  • タイで事故が起きたときの対処がわからない方
  • タイで火災にあったら何をしたらよいのかわからない方
  • 目の前で人が危険な状態に陥っているときに、少しでも手を差し伸べたい方
  • いつでも冷静でいたいと思う方
  • 自分一人だと不安と感じる方

火災避難訓練は、日本の高層マンションでもそんなに頻繁に見かけないと思うのですが、バンコク市内のアパートやマンションではよく見かけます。大体は日曜の午前中に行われます。参加資格は、その建物に住んでいる人であれば大丈夫です。オーナーが別で自分は借りているだけという人でも大丈夫です。実際に住んでいる人なら誰でも参加できます。

火災避難訓練は、肉体的を酷使して体育的なことをやるのではなく、普通はパワーポイントを使って火災が起きた時にどうするか、けが人や倒れた人が出たときはどうするかなどの、一般的な処方をまず教えてくれます。多くの日本人は、小学校のときの避難訓練演習で習ったそのままの内容になります。

結論は、次の3つを確認しておくとなんとかなります。

  • 非常口までの経路
  • 避難場所の位置
  • 緊急時の連絡先と連絡方法

学ぼうと思えば、いくらでも学ぶべきことがありますが、日本国内とは勝手が違いますので上の3つだけはしっかり頭に入れておくようにしましょう。

タイ人の防災意識

タイで火災避難訓練に数回ばかり参加したことがあるだけですが、タイ人ネイティブの防災対策意識は極めて低いのが現状です。具体的には火災避難訓練は、200世帯ほどのマンション一棟で、参加するのはほんの数人ほどです。家族で参加するようなタイ人はまず見ません。一方で、部屋を借りている(住んでいる)外国人は、日本人を含め比較的に参加しているようです。先ほどの例でタイ人が3人参加したら、外国人は数人参加するといった感じです。
この結果から、ほぼ間違いなく言われていることは、自分が倒れたときに周りにタイ人の意識低い系しかいないと、病院に連絡ぐらいはしてくれると思いますが、応急処置そのものはまず期待できないと言ってよさそうです。

実際での煙の充満実演


マンションで火事が起きたときは、煙が空間に充満して視界がほとんどききません。上の例は、窓を閉めず煙だけを充満させてどれくらいの視界が得られるかのテスト実演です。実演では本物の煙ではなく、ドライアイスなどの出火を伴わない形で実演を行います。実演では視界面だけに焦点が当たりますが、実際の火事ではこの煙はほぼ毒ガス扱いしていいものですので、吸い込みますとそのうちに倒れこんでしまいます。目隠し状態で、息もろくにできない状態での出口探しになりますので、やってみるとそれほど簡単ではないことがわかります。
このような実演でわかることは、バンコクでもそれなりの知識を持ったチームが存在しているという点です。厳密にいえば、日本の消防署の消防署員の方がトータルのパフォーマンスは高いと感じますが、それでもそれほど見劣りするようなレベルではありません。

専門的な所見

ビルで火災が起きたときは、まず視界が狭くなります。普通は煙、黒い煙で視界がほとんどききません。大雨の日のワイパーでドライブするのと同じようなものです。また、煙を少しばかり吸い込んでしまっているのが普通です。こんな時に、普通の人間はどう行動するかというと、ひたすら少しでも視界の利く方向に逃げようとします。少しでも煙のない方向に移動します。その結果、どうなってしまうかというと、同じ場所を行ったり来たりして、逃げ切ることに失敗してしまいます。
精神論ではありませんが、このようなピンチの時こそ、少しでも頭が働くようにしておくことが大切です。煙が多少濃くても、簡単に切り抜けられる通路かもしれません。頭が働くようにするには、煙を吸い込ませず、頭をできる限り下にして、場合によっては赤ちゃんのハイハイ動きで確実に移動できるようにしましょう。バカらしいアドバイスですが、確実ですよ。

消火器の使用実演


消火器ですが、本物を使ったことのあることは意外と少ないものです。特に経験しておかなければならない人は、小さな子を持つ親や、年寄と一緒に暮らす人は、その場に居合わせた誰かが適切な対応をできないと他の人を巻き添えにしてしまう可能性があります。
バンコクでは火災が起きたときに、日本の消防署と同じレベルの救出速度を期待できません。あの渋滞するバンコクの中で、サイレンを鳴らしたぐらいで数分で現場に到着できるケースは例外的だと心得ておくべきです。消防車が到着するまでは自力で何とかしなければなりません。
消火器そのものは日本で売られているものと同様ですので、ピンを外して握れば普通に消化剤を振りかけることができます。チェックしておくべきは、握るのにどれくらいの握力が必要なのか、消火器はどのくらい重いのか、一人でどれくらい持ち運べるのかあたりは実演でつかんでおきましょう。参加者が少ない訓練だと、ほぼ全員が消火器の噴射を試すことができますので、これは真面目に体験をお勧めします。

最低限の応急手当の確認


気道を確保し、再び息ができるように応急手当する方法を実演してくれました。胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせる方法など、医療関係者にとっては基礎知識ですが、初心者はできなくても知識ぐらいは入れておく方が、いざというときは助けになるはず。
蘇生措置より、どこの病院が近いか、どうやって救急車を呼ぶか、何を連絡すると救助員が助かるかなどをレクチャーしてくれます。どこの医療機関だと適切かということだけでもいいので、頭に入れておくようにします。

オマケで得られるもの

先ほどの例でいうと、火災避難訓練に参加するタイ人は、基本的には防災意識高い系です。当然ですが、まず管理者組合の長は参加しますが、それ以外の人は意識高い系と考えて間違いありません。防災訓練に参加すると、意識高い系のタイ人とのつながりができるというメリットがあります。特に、外国人(日本人)にとって使いにくいと思うシステムや施設があると、意識高い系の人が声を上げてくれることもあります。これは、あくまでも親日的な意識高い系のタイ人が、日本人を優遇せずに他の外国人に配慮して国益を損ねるのかなどと考えてくれる、本当にありがたい人たちの場合です。そうでない人の場合でも、こちらが不利益を被るようなデメリットはありません。
逆に、意識高い系の人とのつながりができてしまって困ることがあるかと言われれば、簡単に悪いことやズルいことができなくなった、エレベーターでたまたま顔を合わせると何か話をしないといけないなど、デメリットになるかもしれません。

ファイアー・アフター

ビル火災については、あらかじめ訓練を受けた人とそうでない人、知識だけを入れている人の場合と、まったくのドシロウトでは助かる確率が大きく変わります。ジョエルマビル(ブラジルのサンパウロにある25階建てのオフィスビル)で起きた火災(1974年2月)では、エアコン室外機のショートが原因で火災を起こしています。パニック時には、人は狂気的な行動をとりますので、二次被害に拡大するのが常です。その火災同様のことが、バンコクで起こらないとは言えないのが現実です。
訓練はチャンスがあれば受けておくのがおすすめですが、そうでなくても、知識ぐらいは入れておきましょう。どなたにもお勧めできるのはジョエルマビルをモデルにした劇画のゴルゴ13「ファイアー・アフター」を散髪屋、美容院に行ったときにでも目を通しておくのも、お勧めです。

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